ゲーム因数分解

感想を並べたいんじゃなく分析して開発に役立てたいんです

PS4『アンチャーテッド 海賊王と最後の悲報』を因数分解

評価の高いゲームを分析して皆様のゲーム作りに役立てば幸いです。

概要

「映画みたいなゲーム」と評される事が多い本作。
正直その表現には不安を覚える。
決して誉め言葉では無い事を知っているからだ。

その昔、FFが同じように評された。
それは計算力の向上とレンダリング技術の進化によって
実写に近いグラフィック表現が出来るようになったからであってそれだけでしかない。
その後、映画化したことで残酷な現実を証明してしまった。
(ゲームとしてのFFは大好きです)

そういった経緯から先に述べた不安に繋がってくるが、
本作は果たしてどういったアプローチを経てそう評されるようになったのか。

映画とゲームのバランス、探索とバトルのバランス

大きく分けて探索モードとバトルモードに分かれる。
このメリハリが効いている。

時に廃墟に忍び込み、時に沈没船を引き揚げ、時に車でサバンナを疾走しトレジャーハントする探索モード。
先に述べたメニューは排除されているが、不思議と迷うことがない。
なんとなくで動いても目的地にたどり着けるようになっている。
迷路のようにみえるけど実は一本道。
うまい設計、うまい演出だと思う。
ただ複雑な操作は必要なく移動とアクションボタンをタイミング良く押すだけだ。
それはあたかも自分で探索している感覚にさせてくれる。

ライトユーザにも新鮮な体験を与える一方で
古参ユーザにも納得してもらえるようなバトルモード。
TPSタイプの銃撃戦、クローズなステージとなっており攻略法が何パターンもある。
力技で突破するもよし、ステルスに徹してその場のギミックを利用するもよし。

これらが立て続けに押し寄せて来るので、止め時を失ってしまう。
没入しているので止めた瞬間に気持ちの良い疲労感を感じる。
プレイヤーはまさに冒険してきたのだ。

映画に近づくアプローチ

揉めそうなテーマなのであまり引っ張りたく無いのだが、
映画はまず見る環境が違う。
子どもたちが走り回る家や隙間時間に遊ぶゲームと異なり、
劇場で集中できる環境がある。
そこから得られる没入感が全く異なる。

本作はシナリオ、キャラクター、サウンドが高品質なのは期待通り。
しかして重要なのはゲームらしさを排除している点にある。
ゲームだと認識してしまうメニューのたぐいは極力排除され
必要最低限のアイコンが画面中に表示されるのみ。
これにより没入感が増し体験がリアルに感じられる。

ゲームを映画に近づけたのではなく、
映画にゲーム要素を追加したようなアプローチである。

開発の肝

自然な世界をおく
  本作は良い素材が必須である。
  シナリオ、キャラクター、サウンド。
  シナリオに応じた世界を作り込み、そこにゲーム要素をそっと忍ばせる。
  自然にゴールにたどり着けるようなコースを作り、
  キャラクターは行動に合わせて喋る。

サポートキャラと敵のAI
    ゲームとしてのバランスを取った上で、
    それらしい動きをさせるのはなかなか難しい。
    敵はどこまでも追ってくるようでは困るし、
    サポートキャラは面倒な存在であってはならない。
    その点も気が効いている。

雑感

いい映画作りのお膳立ては揃っており、最後の一仕上げを自分がやるような感覚。
高品質の素材に操作を添えるだけ。

映画は歴史があり洗練された娯楽であると思う。
ただゲームはゲーム、映画は映画であってもう一方を肩代わり出来るものではない。
自分自身がインディアナ・ジョーンズになれるのはゲームならではだ。